ブリー・ド・モーの名前は、ブリー地方とセーヌ・エ・マルヌ地方にあるモーの町に由来しています。「ブリー・ド・ムラン」「クロミエ」と合わせて、「ブリー3兄弟」とも呼ばれています。ブリー・ド・モーは、直径35cm、重さ3kgにもなる白カビタイプとしては非常に大きなチーズです。
伝統的な手作業の製法が今でも受け継がれており、資格を持った型師が金属製の型にブリーショベルと呼ばれるブリー専用のスコップを使って手作業で成形します。翌日、手で何度か回転させた後、チーズを型から外し、塩漬けにしていきます。乾燥室で数日過ごした後、チーズは温度や湿度が一定に保たれたセラーに入れられ、週に2回以上回転させられます。手作業で大切に育てられた職人さんの技の結晶です。
ブリー・ド・モーは、フランスで最も古いチーズのひとつ。日本では白カビチーズと聞くとカマンベールを思い浮かべる方も多いかと思いますが、ブリーチーズはカマンベールよりもさらに古い歴史を持ちます。昔から世界中の王侯貴族の食卓に並んでいたのです。シャルルマーニュやアンリ4世など世界史でお馴染みの数々のフランス国王に愛され、多くの作家に賞賛されてきました。また、1815年のウィーン会議での宴席で、各人が自分の好きなチーズが出された際、その中でも「チーズの王様 」と称されたのがブリー・ド・モーだったのです。
表皮は白いベルベットのような質感で覆われ、熟成が進むと赤い斑点が散りばめられていることも。内部は光沢のある麦わら色の黄色で、均一な形をしています。食感はしなやかで滑らか、クリーミー。よく熟成した場合、ヘーゼルナッツ、クリーム、バターなどの豊潤な香りがします。
ブリー・ド・モーにはブリュット系のシャンパンを合わせていただくと、華やかでスパークリングな味わいをお楽しみいただけます。
あまり料理には活用せず、そのまま食べる印象の強いブリーですが、食パンにハムと挟んでクロックムッシュのちょっぴり贅沢バージョンなんかもおすすめです。